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​【第一章】供物を捧げるために

​~初めての討伐依頼~

#55

まずはあの森に適応しなければならない

近辺の環境に慣れている狩人に話を聞いてみた

加工場に行けば動きやすい装備が手に入るとの事だった

何より狩りの携行品を所持していないことを指摘された

回復薬などは必需品だそうだ

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#56

今着ている服を変えるのは気が引ける点もある

しかしここはとにかく虫が多く、草も深い

慣れていなければあまり肌を晒さずに済むような服が

良いだろうとの勧めを受け、基礎的な狩人の装備を貰った

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#57

ここの狩人の多くは、依頼を受けて獣を狩るという

強い獣から弱い獣まで段階に分けられており

自分の身の丈に合った獣に挑めるというわけだ

私はここでは初心の身

少しずつ実力を付けていくのがよいだろう

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#58

狩りに出向く前にアッパーから食事に誘われた

食事処では眼光鋭い獣​人が調理をしている

なんとも豪快で荒々しいが、食欲をそそる匂いだ

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#59

見たことも無いような食べ物ばかりで仰天した

どれもこれも美味でいくらでも食べれそうだ!

食材そのものに力強さを感じる

活力がってくるようだ

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#60

翌日私はさっそく依頼を受けて狩りに繰り出すことにした

森の中は植物が生い茂り入り組んでいるのが遠目でも分かる

依頼の獣はあの森の奥にいるらしい

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#61

狩りの補助具の中に「導虫」と呼ばれる虫を収納する容れ物があった

導虫そのものは見たことがあるが、狩りに活用できるとは知らなかった

目印となる痕跡を求めて導くように飛んでいくのだそうだ

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#62

変わった実が生っている

アステラの狩人から聞いた話では、森の中にはスリンガーに装着できる実が

あちこちに生っているらしく、話に聞いた形状に似ている

一つ持っていってみよう

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#63

森の入り口まで進むと、突然獣の集団が襲ってきた

小型だが動きは機敏だ

凍て地にも似たような動きの獣がいたが、こいつらは

威嚇するばかりで大した力は無いようだ

鎚を数度振り回すと簡単に蹴散らすことができた

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#64

奥に進むにつれ、森は深くなっていく

道は入り組み、足元には至る所に大樹の太い枝が這っている

凍て地にも立派な樹々はあったが、こんな環境そのものが

樹々で飲み込まれているような場所は初めてだ

 

....この足跡は

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#65

少し進んだところに開けた場所があり

翼をもつ緑色の獣がいた

依頼に聞いていた獣..

いや、ここでは"ンスター"と呼んでいるのだった

その中でもこいつは毒を持つ鳥竜種..プケプケだ

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#66

坂道を利用して飛び掛かり、奇襲をかけようと試みた

奴は首をのけぞらせ、何かを溜めるような動作を取る

 

何をする気だ..?

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#67

頭に殴りかかろうとした私に奴は大量の毒液を吐きつけた

毒液をモロに浴びてしまい一瞬たじろいだが

そのまま思い切り頭に一撃を叩き込んで間合いを取った

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#68

奴は執拗に毒液を吐きかけ、私を弱らせようとする

なるほど、ジワジワと痛みが体を蝕んでいく

出発前に「解毒薬を支給します」と言われていたが

''支給品ボックス''というのが分からなかったので解毒剤は

持ってきていない

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#69

毒の痛みは致命的なものではない

先ほどの奇襲で鎚の一撃が効くのは手応えでわかった

先日イビルジョーから受けた屈辱を思い出し

鎚を持つ手に力がこもる

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#70

毒の痛みに耐えつつ奴の隙を伺っていると

突然近くで大きな金切声が発せられた

虚を突かれ、思わず身が萎縮する

別の獣が戦いに割って入ろうとしているのだ

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#71

あれは確か依頼書の中で見た..

名前は何だったろうか、特徴は..?

そう考えていた矢先、奴はすぐさまプケプケに飛び掛かり

間にいた私は巻き込まれて吹っ飛ばされてしまった

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#72

体勢を立て直し鎚を構えると、プケプケはもう一体の獣に

押し倒されていた

これは..というわけでは無いようだ

うまく立ち回れば有利に働くかもしれない

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#73

プケプケは慌てたように飛び去って行った

突然の事でよほど驚いたのだろう

それだけこの獣が強いのかもしれない

 

名前を思い出した

こいつは..確かトビなんとかというやつだ

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#74

こいつは依頼とは関係ない

すぐにプケプケを追うべきだったが..

美しい獣よ、お前に興味がわいた

少しばかり手合わせをしよう

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#75

俊敏な動きに鋭い攻撃..

しかし よく見るとこいつも毒を浴びている

怯んだ隙を見て体に飛び乗る

どこを見ている、私はこっちだ!!

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#76

頭を殴打され転倒した獣にさらに追撃を加える

一撃加えるごとに悲鳴を上げ、たまらず身をよじる

このまま一気に畳みかける!!

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#77

起き上がった獣は森の奥へと逃げていった

これ以上追う必要はないだろう

プケプケの方に向かおう

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#78

導虫の導きに従い捜索していると、

プケプケはそう遠くには行っていなかった

辺りをキョロキョロと見まわし警戒している

奇襲をかけることは難しいだろう

正面から突っ込み、段差を使って翻弄してみよう

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#79

私を見つけるなり尻尾で薙ぎ払おうとする奴の脇をくぐり

段差の上から後頭部を思い切り殴りつけた

うまくかわせたが、尻尾の一撃には注意を払わねば..

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#80

舌の薙ぎ払いをよけつつ懐に潜り込んで足元を狙う

攻撃をかわしやすい位置だが、なかなか重い一撃に繋がらない

いつの間にかくらった毒は和らいでいたが

こちらもだんだんと受ける打撃が増えてきた

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#81

ふと回復薬の話を思い出し、瓶を取り出した

拠点からいくつか持ってきていたのだった

戦闘中だが隙を見て一気に飲み干す

飲む..で合っているのか?傷口にかけた方が良かっただろうか

そんな不安をよそに、体が一気にるのを感じる

傷が癒える感覚..回復している!!

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#82

奴は移動を繰り返し、森の奥の方へと向かっていった

まるで大樹の幹の中のような狭い通路を上っていく

森は横だけでなく、上の方にも大きく広がっているようだ

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#83

獣の巣のような場所に辿り着いた時、小型の獣が一匹だけ

しつこく付いて来ているのに気付いた

よく見るとこいつはアッパーの指示に従いプケプケを攻撃している

アッパーは凍て地でも小型の獣を従わせる力に長けていた

戦闘中だというのにこの短時間で手懐けたのか..?

何というやつだ..

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#84

プケプケはまたもや飛び去ろうとする

フラフラとよろついているのを見て

奴が弱っているのが見て取れた

あと一押しだ

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#85

最初にやつと遭遇した場所の高台の上でやつは眠っていた

休ませるつもりはない

私はためらいもなく、渾身の力で鎚を振り下ろす

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#86

なだれ込むように崖下に落下したプケプケに

いつの間にか小型の獣に騎乗したアッパーが襲い掛かる

急所を噛まれ、プケプケは動かなくなった

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#87

毒を持つ鳥竜..

注意すべき相手だったが、難なく仕留められた

アッパーの助けもあり、凍て地の凍魚の時よりも楽に倒せたように思う

しかし、まだこいつはここでは弱い部類なのだ

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#88

狩人手帳によると、アッパーが手懐けた獣はジャグラスというのだそうだ

威圧によって半ば強引に従わせたようだが

プケプケの肉にありつけて、ジャグラスは満足そうに去っていった

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#89

プケプケ討伐の報酬をもらった私は正直困惑した

倒した獣の毛皮や骨で武具を作ったことはあるが

大型の獣の素材は取り扱ったことがない

加工所で加工ができるというので相談しに行ってみた

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#90

持ち寄った素材でプケプケの防具が作れるというので

せっかくなので頼んでみる事にした

「兜は作らないのか?」と尋ねられたが

この骨の兜は私が獣人族の一員である証

服装が変わろうともこれを脱ぐ気は無い

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#91

加工屋から「他の武器を使ってみてはどうか」と勧められたので

剣と呼ばれる武器を、武器の練習場で試してみる事にした

獣人族の集落には多少の刃物はあってもこんな大振りの刃は無かった

獣人族はみな鈍器で戦うし、当然私も初めて使う

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#92

持ち手の間隔や重量は鎚と似ている

..が、重心が違う

なんにせよ、叩きつけてみるか

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#93

ガンッ!!!!!

弾かれてしまった

踏み込みが甘かったか?

後ろでアッパーが指をさして笑っている

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#94

力を溜めて、奥の柱に渾身の一撃を叩き込む

 

確かな手応えだ

鎚で叩くのとは違う、刃が切り裂き食い込む感覚

肉が柔らかい相手なら致命傷を与えるのも容易かもしれない

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#95

ひとしきり練習していたらいつの間にか暗くなってきていた

それまで黙って見ていたアッパーだったが

「お前には剣より鎚の方が似合っている」

そう言うと、加工場で新たに作った鎚を取り出した

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#96

大骨の鎚

実は、骨の鎚を手にするのも初めてだっ

狩り人として神事に就いた時にはもう神鎚を使っていたからだ

金属の鎚も悪くはなかったが、獣人族の戦士として

初めて自らに相応しい武器を手にできたような気がする

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#97

親友と二人で星空を見た

遠方の地で見る夜空は凍て地とは違っていたが、そこには穏やかさがあった

何も分からない場所で、私たちは大きな狩りを一緒に乗り越えたんだよ

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#98

本当はまだ、イビルジョーに襲われた恐怖が拭えていなかった

でも、アッパーがいたから恐れを押し殺す事ができたんだ

それを伝えると

「オレも本当は初めての大物が怖かった」

アッパーはそう言って私の肩を叩いた

二人で笑いあって、力強く手を取り合った

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