MONSTER HUNTER WORLD ICEBORNE
二次創作物語
【第二章】翼をもつ獣
~広大な森の中で~

#99
それから20日間ほど、私は討伐依頼を受けながら
森の探索を進めていった
探索を進めれば進めるほどに森の壮大さを実感できた
自然の体現ともいえる大樹の様相は言葉にならないほど力強く
ここのすべての生き物は森と共に生きているのだ

#100
森の中の生き物はなにも攻撃的なものばかりでもない
中には温厚で愛らしい生き物もいる
こいつはモスというのだそうだ
小さいのに乗っても怒らない可愛い奴だ
森で最近出会った獣の中では一番気に入っている

#101
20日間のうちに簡単な依頼は一通り受けた
先日逃げられたトビカガチを始め、クルルヤック、ドスジャグラスを倒した 新しい装備の具合は非常によく、特に大骨の鎚は強力だった
そろそろもう少し手強いものに挑んでもいいだろう

#102
そういえば、キャンプという物を教えてもらった
今まではアステラから直接歩いて行っていたが
他の狩人は翼竜を使ってキャンプから森に入るらしい
翼竜は凍て地にもいたが、アレに摑まるとは..?
ゾッとする。私はまだ真似できない

#103
キャンプの傍にそれはあった
支給品ボックス..これの事だったのか!!
見つかるはずがない
私はキャンプに入ったのも初めてだったのだから

#104
アッパーが手懐けたジャグラスに私も乗ってみろというので
試しに乗せてもらった
華奢な体つきのように見えたジャグラスは私を載せたままでも俊敏に動き
高い段差も飛び乗ったり、登ったりできる
広大な森の中を移動するのがすごく楽になった

#105
私は暑いのはあまり得意ではない
骨の兜は凍て地のようなところではいいのだが
森の中を長く探索していると蒸れてもくる
外では滅多に兜を外さない私も、探索中は水辺で顔を洗う機会が多い

#106
その日は天気も良かったので川の傍で涼んでいた
風が気持ちいい
風の音に交じって、なにか風を切るような音がする
その時、私のはるか上空を巨大な影が横切っていった

#107
近くに大きな翼をもつものが降り立っていた
(アレはまだ私には早い)
直感がそう告げていた
しかし、知らず知らず私の心は高揚し
滾る血を抑えずにはいられなかった
アッパーの方を見ると、彼も黙って頷いた

#108
死角から詰め寄り一撃を入れようとすると
奴はこちらに気付き、激しい咆哮を発した
間近で咆哮を浴び、思わず耳を塞いでしまった
奴はすでにこちらに襲い掛かろうとしている

#109
奴は後ろへと飛びのくと同時に口から激しく燃える塊を吐き出し、
それは私の傍で爆発した
炎だ!!
火炎を吐きだしたんだ!!

#110
どうにか直撃を避けれた私はすぐさま反撃に転じる
頭を思い切り殴りつけて火炎を吐くのを牽制してやろうと襲い掛かるが
鎚を振りかざすと奴は大きく羽ばたき、私の鎚は空を切った

#111
(当たらないっ)
上空に逃げられ次の手に焦る私に奴は強襲し
大きな爪で身体を掴まれてしまった
身動きが取れない!!

#112
(食われるっ)
身構えたところで私は奴に放り投げられ、地面に叩きつけられた
幸い損傷は少ないが、掴まれては危険だ

#113
ハッと辺りを見渡すと、奴はどこかへ飛び去っていた
追うか..?いや、やめておこう
一矢も報いることができなかったが、いずれまた挑む事になるだろう

#114
アッパーが腹が空いたと言いだした
その日は食料を持ってきていなかったが、生肉ならある
まだ日も高かったので久しぶりに肉でも焼いてみる事にした
私は里でも長く調理当番をしていた
この手の肉焼きは慣れたものだ

#115
.....??
おかしいな、焦げてしまった
アッパーが「お前はいつもそうだ」と言う
何を言う、私は滅多に焦がしたりしない
そう、時々しか

#116
どうだ!!上手に焼けたぞ!!
アッパーはため息をつきながら
「お前はそれを食え、オレは焦げてる方が好きだ」
と言い、黙って焦げ肉を頬張った

#117
翼竜の摑まり方を試してみようと思い、翼竜の群生地に向かうと
先ほどの翼をもつ獣がいた
いや..よく見ると色が違う
今回は挑む気は無い
空中への攻撃手段をきちんと考えてからだ

#118
翼をもつ獣が立ち去った後、そばにいた翼竜に
スリンガーでフックを飛ばした
フックは簡単に引っかけることができたが
突然翼竜が急上昇を始め、体が浮き上がってしまった
意外と力があるやつだ

#119
翼竜は上へ上へとどんどん上昇していく
身体を左右に揺られながら、あまりの高度に恐ろしくなった
今さら手を離せない
落ちたら命は無いところまで来ている
どこまで行くつもりだ..?

#120
下も見えないほどのはるか上空に上ってくると
大樹の枝が大きくうねり絡まる樹々の広場がそこにあった
翼竜は広場に降り立つと、私を振り落として上空に飛び立った

#121
かなりの高度だというのにこのような広場ができるほど
ここの大樹は逞しく、壮大なのだな
樹々の合間から見える外の景色は絶景だ
広間からは太い枝が道のようにあちこちに走っており
さらに上の方まで登っていけるようだ

#122
少し上った所で外の方に続く抜け道があった
そこにはまるで人の手で編んだような橋が架かっており
誘い込むように道は続いている
なにかが..この先にあるのか?

#123
道の先で見たものに、私は驚嘆した
こ....こんなところに..
キャンプ...
キャンプがある....

#124
キャンプの存在には驚いたが、辺りを見渡すと
少し上の方に何かが見える
ツタを使ってそこまで行けるようだ
ここまで来たんだ、見に行ってみよう

#125
ツタを渡った先に何かの印が刻んであった
なんだろう..?人が刻んだものだろうか
しかし、描かれてあるのはヒトではないようにも見える
なにかの警告だろうか?

#126
絵が刻まれた場所をさらに登るとそこには集落があり
そこに住んでいたのは獣人族のようだった
おそらくアステラの調理場にいた獣人と同じ種族だろう
凍て地の獣人族とは種族が異なるようだ
話している言葉はあまりよく分からない

#127
私には彼らの言葉は分からなかったが、アッパーには
彼らの言葉が分かるという
アッパーによると、彼らは「森の虫かご族」という部族だそうだ
部族の一人が我々に関心を示したらしく、同行を申し出てきた

#128
虫かご族の者に導かれるままに通路を進んでいくと
細かい枝が密集している開けた場所に出た
これは..巣だろう
大きな生き物が住んでいるに違いない
彼が言うにはここにはつがいの飛竜が住んでいるらしい

#129
巣の末端の方は切り立った崖になっている
恐ろしいほどの高さだ
おそらく人が登ってこれる一番高い場所だろう
こんなところまで来れるのはやはりあの翼の獣に違いない
つがいの飛竜というのはあの赤と緑の獣の事だったのだ

#130
さて.. どうやって戻ろうかと考えていると
アステラの狩人から''口笛で翼竜を呼べる''と聞いたのを思い出した
勢いよく口笛を吹くとどこからともなく翼竜が現れ
慌ててフックを飛ばすと、翼竜はそのままアステラの方に飛んで行った
アッパーはいつのまにか私の背にくっついていた

#131
拠点に着き一息ついていると、なにやらモスのような
小さな獣がうろついているのを見つけた
小ぶりだが、実にうまそうな獣だ..
アッパーもよだれを垂らしている
調理場へ持っていってみよう

#132
さっそく獣を担いで料理長のところへ調理を頼みに行くと
なにやらガウガウと怒った様子でまくしたてられた
アッパーによると、この獣は愛玩用で食べてはいけないとの事だ
言われてみればきちんとした服を着ている
すまない、知らなかったんだ
