​【第三章】里の窮地

​～自分が分からなくて～

#233

奴が急に活発になった原因は謎だったが

或いは神の試練だったのかもしれない

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しかし、強者の供物を捧げることで神を鎮めることができるだろう

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その時、突然氷雪を纏った突風が吹き荒れた

#241

イヴェルカーナを見たことを伝えると

詳しく話を聞かせて欲しいとセリエナまで招かれた

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そこにはアステラにいた総司令と名乗る男がいた

彼は私を見ると「君は、イビルジョーの時の..こちらに来ていたのか」

と驚くと、私の語る一連の件の顛末に耳を傾けた

#242

私の話から手がかりを得た様子の総司令は

同族の男に今後の指揮を託していた

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彼らはどうやらイヴェルカーナに戦いを挑む気でいるようだ

私はそれをやめるよう強く訴えた

我々獣人族も人々もみな滅ぼされてしまう

「我々はこれまでにも古龍に打ち勝ってきた」 男はそう語った

#243

聞くところによると、イヴェルカーナの他にも各地に古龍がおり

"青い星"と呼ばれる凄腕の狩人によってことごとく倒されたそうだ

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神を葬れるほどの力を持つヒトがいるというのか..？

#244

ちょうど酒場に青い星がいると聞いたので訪ねてみた

そこには精悍な男が座っていた

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「あなたが青い星と呼ばれる狩人か」

「人からはそう呼ばれるが、俺の名はベルモートだ」

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ベルモートと名乗った男は目線もそのままに酒を呷った

#251

「最後にエステリカの姿を見たのはその服を持って帰ってきた時だよ」

「黄金郷で手に入れたんだと言っていたね。

　彼女はその時にもう治せないほどの火傷を負って、狩人を引退したんだ」

黄金郷..先ほどベルモートが言っていた話だ

#252

「大変に強力な装備だが、もう自分には使えないから

　いつか自分に娘ができたら託したいと言っていたね」

「その後、風のうわさで身ごもって新天地へ移ったと聞いていた」

「てっきりあんたは娘で、エステリカからそれを

　受け継いだものだと思ったんだよ」

​

「そうそう、エステリカは娘に"ゼヴァン"と名付けるつもりだと

　言っていたが、あんたがゼヴァンかい？」

#253

「私はサモ。幼い頃にこの地に捨てられ獣人族の里で育った者だ」

老婆はひどく驚いたようだった

「そうだったのかい..すまないことを聞いたね」

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私は首を振るとその場を後にした

#261

「あぁ..分かってるよ。

​　キーン、お前はサモの事は友達じゃなく、好きだったもんな..」

「立場があってついていけないのも、その無念な気持ちも分かる」

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「でもよ、どうしたってオレらは獣人族なんだ」

「サモとつがいになんてなれない。だからよ、お前じゃぁ、ダメなんだよ」

「ただの親友として、相棒として隣に立てるオレじゃないと」

#262

「なぁキーン。お前とはずっとウマが合わなかったけどさ」

「父ちゃん母ちゃんの仇、一緒に手伝ってくれてありがとうな」

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「.......」

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「サモはいつかきっと連れて帰ってくるから」

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「それまで、待っていてくれ」

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キーンの目からは涙があふれていた

#263

翌朝、キーンが見送りに来てくれた

「サモ、お前の働きで里は救われた。みんな感謝してる」

「神も捧げものにきっと満足されてある。

　里も平和になったし、しばらくはここにいなくても大丈夫だ」

「いつどこにいても、俺たち部族はお前の無事を祈ってる。気を付けてな」

私はキーンに神鎚を預け、里を後にした

#270

外に出ると、凍て地の景観を眺めながら入浴できる立派な浴場があった

凍て地にも所々に温泉があり、私も時々入っていたのを思い出す

入浴用の着衣があるとの事で、借りることにした

#271

アッパーも誘ったが「オレはお湯は嫌いだからいい」と言われた

寒空の下、温かい湯の中で一人ゆっくりと体を伸ばす

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改めて気付いたが、鎧の獣との戦いで体のあちこちに青あざが出来ていた

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だいぶ無茶をしてしまったな、と体をさする

#272

これからどうしようか..と考えていた

セリエナで耳にした話だとイヴェルカーナは消息を絶ったらしく

しばらくヒトとの衝突はなさそうだった

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アステラに戻って、更なる狩場に足をのばしてみようか